秀麗と劉輝が声を上げ、楸瑛もわずかに目を見開いていた。

「気付いていらっしゃるのでしょう？静蘭……ついでに主上の事も」

「そうだね。たぶん『花』が『下賜の花』になる事はないよ」

どこまでも霄太師の思惑通りだ。

仙洞省の扉は、気味が悪いほど簡単に開いた。

人を裏切るのは行けない事。そう昔教えられた。

横に並んだ楸瑛にそう聞くと彼は苦笑いを浮かべた。

それが強いとは言え、まさか州牧自身だとは思っていなかったが。

それでもなお、確かめずにはいられない。

性格は俺様、腹黒、人でなし。そう、吏部の覆面からは聞いている。

トン、トンと一定の間隔で決して速くない、むしろ落ち着いた音が近付いて来る。

「俺も、もうだめだ。娘の幻を見るなんて！」 「私はあなたの娘ではありません」

自分と燕青では到底当てはまらない言葉だ。

その顔に浮かぶのは気遣いや心配。どうやら記憶に酔ってしまったらしい。

六年前はそれほど苦手に感じなかったと言うのに。