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兄弟の誕生
ドリーム小説 「だっては今日からここに住むんでしょ?」
が家に来た日、食事の席でそう言った百合には思わず謝った。
「はい。急にこんな事……すみません」
昔からこの方には世話になってばかりである。
いくら黎深が今日言い出したこととは言え、断るべきだった。
「そんなの全然良いのよ。黎深が提案した事なんだから。どうしたの絳攸?」
「……百合姫様、さっきの話本当ですか?」
「あら、絳攸も知らなかったの?」
明らかに知らされていなかった絳攸に黎深は冷たい視線を向けた。
「ふん。……その顔はなんだ絳攸、まさか嫌とでも言うつもりか」
「……いえ、本当に黎深様のご友人なのかと思いまして」
「たしかに友人にしては年が離れてるよね。絳攸より若く見えるもの」
「絳攸よりだと?」
黎深はそれを聞いて訝しげにを見た。反対には慣れている事なので流そうとしたが、黎深の表情を見て口を開いた。
「なんですか?」
「お前、絳攸より若い事になってるが?」
「普通、私は15に見えているはずですよ」
「…………ごまかしすぎだ……若作りめ」
「あぁ?わざわざ作ってないです。しようと思えば13に見せれるんですから」
勢い良く言い切ったに黎深もめずらしく勢い良く突っ込んだ。
「作りすぎだろうが!」
「利用できるものを利用して何が悪い」
「あの………」
それていきそうな会話に絳攸が割って入る。
「………まあ、軽く絳攸を超えている事だけ言っておきます」
そう言っては箸をすすめた。



基本、絳攸は日の光で目を覚ます。
今朝もいつも通り寝不足だと感じながら、目を開く。なんだか髪がくすぐったい。風でもあるのか。と、思っていると頭が色を判断した。
疑問符を浮かべたまま、それの動きに合わせて目を上げると灰色があった。
ふっと細められる。
「やっぱり、可愛いね」
言葉を聞いた途端、自分の前にいるのが何かわかり、それまでの眠気が吹き飛ぶ。
「………っ、なんでいるんですか!」
勢い良く飛び起きた絳攸には言った。
「おはよう絳攸。ご飯だよ?」
良くわからないが早く着替えるように言われたので着替え、その頃には少し頭が回り出した絳攸が部屋を出るとがいた。
「早いね」
そう言って、何故か男物を着たは歩き出した。絳攸もそれに続く。
「女が屋敷に住む上に、日々の疲れがたまっている君には悪いけれど、百合姫様に頼まれてしまってね。それに君も黎深に叱られるのは困るだと思って、私が起こしに来たんだよ。」
「はい。ありがとうございます。けれど……どうして男物を?」
「ああ、あれが普通じゃなかったんだ。黎深の希望でね。百合姫様には反対されたが、私は男物を着ているのが普通なんだ。これで慣れてしまったから女物は好かないし、動きづらい。それに……可笑しくはないのだろう?」
たしかに、似合っている。もし朝廷で見かけたら、大抵の者は可愛らしい少年だと思うだろう。声は少し高めだったが、落ち着いた喋り方は知性と余裕を感じさせる物で、なぜか腐れ縁の楸瑛を思わせた。
たしかに絳攸より年上らしい。
「実を言うと私は国試を受けるつもりでいるんだよ。………そこまで行けたらの話だけれどね。その時は君の兄として受ける事になると思う」
はっとして絳攸はを見た。
「と、これを言う必要は無かったね。混乱させてしまったらごめんね」
黎深なら絶対言わない謝罪の言葉を簡単に言われ、絳攸は軽く首を横にふった。
本当にこの人は黎深様の友人なのだろうかと思う。
「大丈夫です。様はなぜ官吏になろうとおもわれたのですか?」
「呼び捨てでかまわないけど…………理由はきかないでほしいな」
「……はい」
そう答えた絳攸の頭をのほうが小さいのになでた。
「絳攸の髪は綺麗だね」
「は、へ――そ、そうですか?」
「ああ、朝露で輝く若草のようだ」
ふふふふと笑いながらは言った。
「……………………」
「なんだい?」
「いえ………知り合いに同じような事を言った奴がいたので」
「ほう、それは会ってみたいものだけれど。男?」
「ただの腐れ縁ですし、あんな常春とは会わない方が絶対いいです!」
「常春………それはまた凄い呼び方だね」
さ……」

「あ、はい……」
だが、訂正しようとした言葉は不機嫌そうな黎深によって遮られた。
「遅いぞ、絳攸。さっさと食べなさい」
「っ、はい」
急いで食べながらを見たが、彼女は別に気にしたふうでもなく黎深と話していた。
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