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その声に答えるすべを持たずに
父親の望みは理解していた。
自分が子供に――清苑に取り入って、子供を産むこと。

けれど伶華にはわからなかった。
権力を手に入れた先に、一体何があるのだろうか。
清苑や王である伯父のいた場所は、ここよりも一段と冷えた場所のように思えた。
そこに暖かみはなかった。幸せはないように思えた。

それでも、自分が悪いことは理解していた。

父親の望みを適えられなかった、帰ってきた自分が悪いのだと伶華は思う。
だから謝らなければ、耐えなければ。
この痛みに、兄の懇願する叫びに。


もう、どこが痛いのかわからない。
視界も暗い。
ただ、ひび割れた兄の声が遠くから聞こえていた。










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