そんな友人たち
ドリーム小説


文化祭が終われば二学期の期末試験。
まったくもってこの学校は行事が多い。けれど中学ほどではないらしい。
此処まで来ると、関西弁が耳になじむ様になって来た。
速いやり取りにも付いていけるし。一応なら突っ込めるようになった。彼ら曰く微妙な関西弁らしいが。
オチを付けて話すのはまだまだ無理。
私は標準語を手放すつもりは無い。大学が関西であることはないし、将来使うのは標準語と英語。そこにボケや突っ込みはいらない。

「なんで、やねん?」
「なんでやねん!語尾があがっとるわ!」

別に関西弁の指導を受けているわけでもないのに、横から謙也くんの突っ込みが入る。私はこの微妙な関西弁で常にボケ扱いされる。
氷帝では突っ込みかどうかはさて置き…仕切り役だった私がだ。
キャラの濃いテニス部と、メガ級俺様天然ボケだった幼馴染のせいだろうけれど。
これはこれで居心地が良い。

はそのままでも十分やと思うで、俺は」
「いやいや、せっかく四天宝寺に通っとんやから関西弁みにつけーちゅう話しや!」

「そやかて謙也。がこっちの言葉に慣れてもたら…標準語使えんくなるんちゃう?」
「へ…それってあかんのか?」
「……謙也」


白石くんが押し気味になっている。そんな二人の会話をぼんやりと聞く。
同じ関西弁でも、二人は少し違う。
白石くんのは少し柔らかい。まるで妹や弟に接するようにクラスメイトと話している。ただし、謙也くんには親友だからか手加減が無い。
目に見えて喜怒哀楽の激しい謙也くんは、少し突っ込みの勢いも強い。そのかわり気さくで表裏がなく、接しやすい。


「………………」

少し謙也くんを褒めすぎた気がする。客観的に慣れてない。なる必要もないか。

「…………?」
「白石くんて忍足くんと話してる方が素?」
「?」
「あ、いや、普段猫を被ってるとかじゃなくて、少し雑なる感じがするから。小春ちゃんや他の男の子と話してる時とは少し違うななんて…親友だから、当然かもしれないけど」

そか?知らんわと二人が言葉を交わす。
どうやら気付いてなかったらしい。
仲良しってことだよといえば、途端に二人とも微妙な顔。
思わず笑ってしまう。
素直じゃなくで、でもそれがなんだからしい感じがする。
素直になれない男同士の友情。


「やっぱり男の子っていいな」
は男になりたかったん?」
「今でも結構本気でなりたいよ?」
「それは困るやろ」
「どうして?」
「いや、そりゃ…まぁな?」

「おん。が女の子でよかったわ」

白石くんは、困ってる謙也くんの前に割り込んで、それは綺麗に笑う。
この人は基本褒め殺しだ。

私は相変わらず、謙也くんといるほうが心地よい。しかし、白石くんといるのを居心地悪いとは思わなくなっていた。
唯の優しい人でないけれど、悪い人ではないのだろうと思っている。
未だ優しさに底は見えないけれど、以前の様にそれを薄気味悪いとは思わなくなった。
無条件に誰にでも振舞われるように見える優しさにも、区別があると知った。

やんわりとだけど、この人でも拒絶することもあるんだと知った。
辛い時もあるのだと知った。
それを隠しているのに、不意に謙也くんに指摘されてわずかに動揺しているのを見た。
不意によぎる冷たい目に、彼の本音が見える事もあった。
その一つ一つを見て、考えて、結局私はこの優しく掴めない人の友人をしている。






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