まきこまれ学際前
ドリーム小説
夏休みが明けて、中間テストが終われば森風祭という名前の文化祭。
前期クラス委員だった私は役目から解放されてクラスの喫茶店を手伝おうと思っていたが、有無を言わさずテニス部へと引っ張られてしまった。
毎年男子女子テニス部は合同でイロモノと聞いた瞬間に、瞬間に警戒しとくべきだった。
男子テニス部は白石くんが来年二年で部長になるのは決定らしく、新部長としてとりあえず一人、女子の人員獲得の義務があったらしい。
私は凄みのある笑顔をした白石くんに先輩達の前に引っ張り出された。
「メイド服!」
「……なんちゃって制服!」
その他いろいろ。
反論する間もなく、メイド服になりました。
ありえないコスプレでなく、ただのメイド喫茶というだけましなのだろうか。
「私テニス部じゃないのに……!」
思わず千歳くんに泣きついたのも道理だと思う。
「はむぞらしかね、大丈夫たい」
「羞恥心の問題だよ!」
「やってみと、楽しかとよ?」
そかこの人中学でもやったんだなと確信した。
私も実はやった事あります。けれど、どうしてろどうしてそんなに受け入れているのだろうこのテニス部は。
大阪人のノリだろうか。味方がいない。
ずんと落ち込んでいたら、またぐりぐり頭をなでられて、何故か白石くんが千歳くんを引っ張って行った。
このパターンも多いな。もう慣れてしまった。
「似合うと思うけどな、のメイド服」
「…白石くん変態?誰かと同じで脚フェチ?」
「え、ちゃうって、なんなん脚フェチって」
「謙也くんの従兄弟がそれだから。三年間同じクラスやったけど…体育のたびごとに女の子の美脚眺めをしてたよ」
「ゆ、侑士がそんなことー!?」
食べていたパンを落として、がーんとショックを受けている忍足くん。やっぱり知らなかったんだ。謙也くんには悪いけど、ざまあ見ろエセ眼鏡め。
「私の足が痺れてるのをいいことに、触られたことあるもん」
「は!?」
「友人が問答無用で殴り飛ばしてくれたから良かったけど」
「ゆーしー俺…」
素敵だったよ宍戸。さすが男気がある奴だ。惚れ直した。結婚してくれ。
萎れている謙也くんを放置で話し終えると、白石くんの表情が険しい。うわ、まずい。
多少過保護で優しい白石くんのことだ忍足侑士に抗議しかねない。
「え、あ…でもまあちょっと触られただけだし。本気じゃないし」
いや、嘘です。奴は本気でした。試合中レベルで本気でした。
「ちょっと友人同士でじゃれたのが行き過ぎて…」
「は…友人にそんなことされても平気なんや」
「平気じゃないよ。後で蹴り倒したし!」
「でも友人なんや」
「え、うん。そうだよ…?」
白石くんが予想してなかった方向に不機嫌です。わからない。
友人でなければなんだと言うのだろう。
「そげんぐらいにしときや白石。が困っとう」
「………そうやな。が友人や言うならそれでええねんな」
千歳くんの一言で白石くんの空気が柔らかくなる。
「けど、今度からそんなんされたらちゃんと助けを求めるやで」
「…うん」
「女の子やのに。は無防備すぎるわ」
無防備ね…と思う。
実は古武術をしていると告白すれば安心するのだろうか。けれどきっとそういう意味ではないのだろう。
何であれ女の子は守られるべき。そう白石くんが思っている以上言っても仕方がない。