一年の夏
ドリーム小説


テスト終了。
脳内で打倒跡部を目指して何時も通り勉強したので、それほど悪い点は取っていないだろう。
ア〜ン?と見下されるような点は取っていない、はず。
だけど学校が変わるとやはり…などと考えても仕方がないので、前から誘われていたテニス部の見学に行った。
ファンの子たちの嫌がらせも減って来たし、この辺で一年テニス部という防御壁を作るつもりだ。
一通りといっても三人は知っているので、金色…じゃない小春ちゃんに一氏くん、小石川くん。
ダブルスの二人はちょくちょく見かけていたので、小春に手ぇ出したら許さんからな!にはまるで芸人さんを生で見たような感動を覚えて、それから彼のマジな目に笑ってしまった。
これは本気のようだ。
対して小春ちゃんはIQ200というだけあって、なかなか手ごわそう。相談には乗ってくれても相談はしてくれなさそうなタイプだ。そもそもオカマは演技なのかどうなんだろう。一氏くんへの気持ちもだが、気になる。ごめん一氏くん。手ぇ出すわ。
もちろん表には出さず、心の中で謝罪する。

「このままだと半年かかるたい」
「?」
「千歳くん!」

ぐりぐりと頭を撫でていた千歳くんが耳元でそう教えてくれた。
半年…絶対予測を出来る?らしい彼はそういう。しかしこのままだと言った。

「望む所よ」

このままでなくすれはいいのだ。
ますます闘志が沸いた私を相変わらずぐりぐりしていた千歳くんだが、腕を掴んだ白石くんによって引きずられて行く。
なんだか冷たいものが通りすぎたような感じがして、身震い。

「あらあら、蔵リンたら」
「小春ちゃん」

「まあ、気にせんでええよ。ちゃん」

小春ちゃんが言うならそうなのだろう。
サクッと忘れよう。





テニス部に夏休みは無いらしい。
私は何度かテニス部に飲み物を差し入れたり、手伝ったりしたがそれだけで、大部分を待ちにまった里帰りに費やした。
一応実家はこっちだし、テニス部の面々に支えられたとはいえ、情けない事にホームシックで落ち込んだ夜もそりゃあったので、第二の家である跡部邸へ行くことは独り暮らしの子が親元に変える心境だ。おそらく。
日吉を部長とする氷帝中学の全国大会応援。合間を縫って皆と夏まつり。他校の友人に会いに行き。生徒会でないのに景吾の仕事を手伝わされ。おじさまと社会について語りあい。おばさまとお茶をし。景吾とベタベタした。

バカばっかりしたけど、有意義だった。

「で、どうして白石くんの方が白いの」
「体質や。こそ何処行ったん?」
「東京に里帰り」
「ふ〜ん。こら千歳寝ない。終わらんで!」

そして今は、テニス部からのヘルプコールを受け、部屋に白石くんに終わってない謙也くん、一氏くん、千歳くんを招いている。
くれぐれも純和風の離れには行かない事!!とそれだけは最初にこれでもかと叩きこんで誓約書を書かせて。
あそこにはいま日本で唯一の血縁者がいる。

お昼の冷麺を食べながら。白石くんと、今後の方向性を検討。
謙也くん、千歳くんはやればできる子。問題は一氏くんだ。小春ちゃん関係で警戒されている私にはどう接したらいいのか分からないので、彼の事は白石くん担当とする。私は二人の見張り…可愛い二人を眺めれる役得と言いたいがなんせ切羽詰まっているのでそうも言ってられない。
ペン回すよりも書け!と叱りつけて、問題集を終わらせていく。
終わった順に家に帰して、最後までかかっていた一氏くんが、小春ー!と電話しながら帰ると。どっと疲れがでて、二人でそれぞれ長椅子に沈み込む。

「すまんな。夏休み最後の一日潰してももおて」
「いいよ。お疲れさま」


だらーっとしていたら一氏くんを玄関まで送って行ったのとは別のメイドが、紅茶片手に夕食について聞いて来る。もうすぐ八時だったので、二人分を頼む。

夕食はちゃんと食堂で。無駄に机が大きいので二人で使うと不自然になるが、仕方がないだろう。向かい合って座る。

「今更やけど、の家ってむっちゃ大きいねんな」
「……まあ、跡部景吾の家ほどではないけどね」
「人気がないんやけど…家族で住んでんねんよな?」
「…………ん〜ああ両親と兄は外国だよ。ここには祖母と住んでる」
「そうやったんか。どうりで…」
「何か気になってたの?」
「大人びてると思っててん」
「そうかな?」

そいうえば何時から彼といて気まずく思わなくなったのだろう。千歳くんと出会った理由がそうだったから、それ以降だろうけれど。私が避けていたのに気づいてて自然に距離を詰めるなんて。不思議な人だ。





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