ゆるやかな坂道のように
ドリーム小説


中学時代ほどでないが、放課後に残って作業することに慣れてしまった自分がいる。
入学時の成績で半ば担任から押しつけられた学級委員。

相方が白石くんになたのは一応先生の気遣いと、彼の人格だろう。
一先ず自分の分が終わってので、ボールペンを置き、ちらと、隣の席で作業している彼を見た。

白石くんは頭の回転が速い。
勉強の成績はそれほどでないと言っていたが、恐らく部活のせいだ。

今回だって、彼の示したしたアンケートの分担はとても効率的だった。

「………」


作業中、景吾ほどではないが、それに近い感覚になっていた自分に苦笑する。
きっと彼らは良い友人になれるだろう。レベルが高い。

中学と高校は言って早々そんな人間と組んでいる自分は、なんというかつくづくこちら向きの人間だなと思う。


「白石くん。それ手伝っていい?」
「んーええよ、もう終わる」

顔も上げずにそう言われたので、片づけをする。

彼と違って自分の席で作業していたので、すぐにすむ。
携帯を問えり出したが、さわるのもあれなので、白石くんを眺めることにした。

美醜に疎くなってしまった私でも眺める価値があると思ってしまう。
景吾と張り合える。彼とはまた違った、美術品のような静の美しさ。
人形の様とでもいうのだろうか。

にしては筋肉が付きすぎかと、彼の引きしまった体を眺める。
肩から背中へと視線を下ろした後、もとに戻ろうとして、白石くんと目があった。


「そんなにじっくり見られたら、いくら俺でも照れる」
「……うん。ごめんね。終わった?」
「……おん」
「おつかれさま。あと私やるよ」


さっさとまとめようとそう思って手を出すが、白石くんは一向に動かない。
少し困った顔をしている。


「白石くん?」
「……!あーすまん。おおきに。ほな、片づけさせて貰うわ」

かと思えば、弾かれた様に私に資料を渡して、自分の席に歩いて行く。

「?」


後は二つを一つにするだけ。だったので直ぐに終わり、用意の済んだ白石くんと教室を後にする。
生徒が下校したか部活中の今は、廊下は意外と静かだ。


「部活休ませちゃってごめんね」
「ええよ?気にせんといて、そもそもさんのせいちゃうし。それに部活あるかってこれ一人でやらすのはあかんやろ」

そうだろうかと思う。これぐらいなら中学では一人でやっていた。


「優しいね白石くんは」
「そんなことないで、普通やわ」
「でもそんなに優しくしてたら大変だね」
「?」
「その顔でその人柄って…」


はっとする。
確実に余計なことを言いいかけた。

「…ごめん」


体面を保つの大変そう、女の子が煩わしそうだなんて。
そんなの友人でもない私が言う事でない。

「なんやよくわらんけど…さんが思ってるほどちゃうで?」

思わず、よくわからないと首を傾げる。

彼はクラスメイトとして完璧で、昼休みの呼び出しにも毎度応じて、そのたびに忍足くんに嫌みを言われている。
忍足くんも十分モテるだろうと毎度私は思うのだけれど。

ともかく氷帝でモテる友人を多く持つ私からすると、女の子の寄って来る度合いに比べ、その子達ににとてもとても丁寧な対応をしてるなと思うのだ。

景吾とか日向とか景吾とか…ちょっと別方向に問題のある忍足眼鏡とか。
優しさは無理だろうから、せめて大人な考え方を見習えと思うぐらいには。

いや、真面目に考えなくとも無理だろうけれど。それが彼らの良さでもあるし。

「迷惑とは思わないって?」

到底信じられないが。


「おん。そりゃ部活で疲れててほおっておいてほしい時もあるけど、迷惑とは思わへんよ」


なんともお優しい答えだ。しかも意識してそうしてるのではなく、内側から出て来たよう。
逆に冷たささえ感じる。


「昼休みに告白されるのも?」
「あー……まあ、なんちゅうか。俺ってそれほどか?ってちょっと思ってる」
「女の子にとって、見た目って大切らしいからね」

「てことは、さんはちゃうん?」

「うん。あんまり興味ないかな」



好きになって人が一番かっこ良く見えるなんて恥ずかしくて言えない。






委員会があるから休むと伝えたとはいえ、思ったより早くすんだので、部活に顔出すわとと別れ、テニスコートへと向かう。

あんまり興味ないと答えたの顔が頭をよぎる。
良い慣れたセリフのようだったからどこまでが本心かわからない。けれどなぜかあんまりという言葉に本音が含まれている様な気がした。

氷帝テニス部に友人がいたというの、あんまり顔の美醜に興味がない。

教室で作業の終わったがじっと自分を見ていたのは、見とれてたわけではないらしい。分かってはいたが、少し期待していたようだ。

「おー白石!終わったんか?」

「思ったより早かったな。はよ、着替えてき」
「はい」

ぶんぶんと手を振る謙也に呆れながら手を振り返し、ベンチにいた先輩に挨拶して部室に入る。

「………」

は、謙也に見とれていたらしいことがある。
謙也の従兄である忍足侑士の独特な性格が原因なのだろうけれど、最初からどうも謙也だけ好感度が高い。

ぴゅあだとは目を輝かす。そんなの方がよっぽどぴゅあでかわいいとおもっている自分は異常だろうか。

の事をよく知らないのに。
謙也の方がと親しい。誰が見ても決定的に。

「………あかん」

着替え終わりと同時に、そんな雑念を無理やり飛ばす。
一二年で白石に勝てるものはいいない。それでも先輩にはまだ五分五分。
夏までに勝ちたかった。

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