自分の事は気付かない
ドリーム小説 忍足から白石を紹介されてから、美形な彼と少し話すようになった。
そしてその分、女の子友達が余所余所しくなったのは気のせいではないだろう。別クラスの忍足と違って白石はクラスメイト。席は近くもなく、遠くもなかった。
にとって親しみがあるのは依然忍足だが、周囲から見たら違うのだろうと思う。実際会話は彼との方が多くなっていた。
学生にとって同じクラスにいるというのは、話題の種が数多く発生するものなのだ。

休み時間になると白石はに話し掛けてくる。
それは教室以外の授業では特に多かった。が友達と話しているのに入って来るなんてことはないが、彼が友達と話しながら突然話を振って来るぐらいのことは結構あった。心臓に悪いし、何やら配慮に欠けている。
がそう思うのだから、唯でさえすぐにそう言った話題を好むこの世代が放っておかない事ぐらい予想が付く。遅かれ早かれさまざまな噂が流れるだろう。そのどれが主流になるかはこれから次第だけれど、自分の望む結界ならない事だけは経験からわかりきっていた。
だからといって避けるのは性に会わないのだが、こちらからは近づかないようにしようと決意した。

「どうして白石くんは私を気にかけるんだろう」
「いや、俺に聞かれても困るんやけど」

そして、上手い具合に廊下を歩いていた忍足を見つけたので相談してみる。
そしてこの返答。このごろ互いに遠慮が無くなって来た気がする。いや、嬉しいけれど。

「単に気に入られとんちゃうん?」
「東京からで四天に高校からって以外、どこにでもいる人間なのに?」
「は…何言ってんねん。めちゃくちゃ目立っとうやん!」
「どこが?」
「………………自分、鈍感やな」
「失礼な!鋭い方だよ」

よりよほど空気読めなさそうな忍足くんに言われたくない。

「おい、何か失礼なこと考えてへんか…まあいい。じゃいなくて、あれだけ体育で目立っといて何言ってんねん!」
「えーたまたま上手く行っただけだよ」
「毎度?」
「……大体」
「たまたまちゃうやん、それ」
「そうかも」

確かに少しやりすぎたかもしれない。けれど自分のそれはそれなりであって、テニス部のような部活レベルではない。

「でも…」
「なに廊下で仲良く漫才しとん、御二人さん」
「おー白石やん」

噂をすれば影である。白石は今日もきらきらしている。オーラが常人でない。古い校舎に光が当るようだというと大げさだが、周囲の女の子によって温度ぐらいはあがってそうだ。

「何処が漫才やねん」
「金色が悔しがるレベルやったで」
「………ああ、眼鏡の方の」
「そこは坊主のほうやろ」

忍足が突っ込む。

「で、何の話しとったん?」
「私が目立っているかどうか」
「……今まさに目立ってるやん」
「二人がいるからでしょ」

慣れてしまっているが、女子からの熱い視線と冷たい視線を感じる。暑いのと冷たいので中和されたりしないだろうかと現実逃避。
とりあえずまだ差し迫った殺意は感じない。でも敵意は強くなっている。
何だか知らないが自分が目立つらしいことは理解した。
そう言えば、主席入学だった。新入生代表も勤めた。
確かに入学早々、見知らぬ顔がそんなことしてたら目立たないわけがない。



template : A Moveable Feast