はじまったところ
ドリーム小説 入学式からして驚かされた。関西の高校とはこんなものなのだろうかと思い、いやいやと否定する。唯一身近にいたエセ関西人に言わせれば、ちゃうちゃうとでも言うのだろうか。

笑いを取る生徒会長や教師陣に、思い思いに突っ込む生徒達。声を出して笑っていい空間。
緊張や静寂の支配する式典ばかりだった氷帝とは、何もかもが違って見えた。
どちらが良いとかそういう事ではないけれど。

「そっか、さん東京の人なや」
「どうりで見たことが無いと思った」

ここ四天宝寺高校はテニスで有名な四天宝寺中学の系列で、生徒もほぼそのまま来ているらしい。
それなりの進学校だが外部から入学するものは少ないようで、まるで転校生であるかのような扱いをされた。おかげで友達も出来た。

さん。悪いけど、昼休みまでにプリント集めて職員室に持ってきてくれんか?」
「はい。わかりました」
「委員長も大変やね」
「結構慣れて来たよ」
「さすがやわ。私には到底できへんもん」
「そりゃあんたには無理やろう」
「なんやてー!?」

高速で飛び交う遠慮のない言葉。
自分にこんなに一度に女友達が出来たのは初めてだ。
楽しいなとは思った。




メールで来たお誘いに、は少し悩んで行くと返答する。
相手は忍足侑士の従兄弟、忍足謙也だった。
『俺、忍足謙也。忍足侑士の従兄弟やねん!さんのこと、あいつからからくれぐれもよろしゅう頼まれてんねん。まあ、仲良うしてくれちゅー話しや!』と入学早々、あのエセ眼鏡の従兄弟とは思えない屈託のなさで話しかけてくれた彼とは、クラスは違うが仲良くしたいと思っていた。
なんせスレてない。氷帝テニス部の大半が無くしたものを持っている。
十分美形でモテるはずなのに(今のところこれと言って欠点もない)、何の根拠もなしに自分はモテないと思っている節がある。けれど余り気にもしていない。
このところ女友達に囲まれているが、は氷帝で長らく男友達ばかりの生活を送って来た。
男女で差別するつもりはない。しかし何度男友達な彼にほっとしただろう。
今や一番の癒しである。
そんな彼からテニス部見学へのお誘いを貰った。
忍足侑士と仲が良かったのだからテニスは知っているだろうし見に来ないかと言ったところか。
おそらく彼の言う、白石、金色、一氏、といったメンバーの紹介も兼ねているのだろう。
四天中学のテニス部が強かったのは去年の全国大会で見ている。
こっそり青学に紛れて見せて貰ったそれは、なんというか凄かった。
特にダブルスの二人の視覚的な衝撃は忘れられない。実際に会うともっと濃いメンバーなのだろうと思うと、少し足が竦む。

さん?」
「忍足謙也くん」

テニスコートから幾分手前で、立ち止っていると忍足に声をかけられた。

「見んのか?」
「………すごくメンバー濃いんだよね」

あーと忍足は目を逸らす、自覚ありと見た。

「とりあえず、名前と特徴を教えて貰っていいかな?」
「そやな。確かにあいつら濃いし、心構えしたほうがえーちゅう話しやな!」

その日は結局、メンバーの特徴だけ聞いて帰った。通りがかったので紹介してくれた白石は、幼馴染レベルの美形だった。



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