空から来たそれを見つけたのは、偶然か必然か
ドリーム小説 それは良く晴れた冬の事だった。
徹夜明けの悠舜は燕青を護衛に、琥l城から車椅子で邸に向かっていた。
「だから、今日一日はちゃんと寝………悠舜」
「はい?……!」
振り替えった悠舜は彼が見ている方向を見て、絶句した。
人が落ちてくる。見ればまだ子供のようだ。
急いで燕青は庭に出て、子供の下に滑り込んだ。
「………っ!」
ドンと言う音と、もう一つ聞いた事のある嫌な音がした。
雪が舞って姿が見えない。
「燕青!」
急いで車椅子から立ち上がり、悠舜が二人の元に向かうと、むくと燕青が雪のなかから顔を上げた。
「俺は大丈夫。けどこいつ腕折れたかも」
子供はどうやら左腕を下にして落ちて来てしまったようだった。
「とりあえず琥l城で休ませましょう。にしても変わった服装ですね」
すやすやと燕青の腕の中で眠る十にも満たないだろう少女は、これまで見た事のない服装をしていた。
少女が目を覚ましたのは、三日後の事だった。
落ちて来た時の服を抱えて、歩いていたところを燕青に発見され、悠舜は仕事を切り上げた。ちょこんと言われた通りに、少女は与えられた部屋の寝台に座っていた。
「おまたせしてすみません」
少女は「いえ」と小さく言った。
「ここは……どこでしょうか」
「茶州の琥l城ですよ」
「…………?」
少女はまず驚いて、それから嬉しいような、不味いような顔をした。最後には頭を抱える。
「一体私が何をしたと言うの………」
だんだん泣きが入ってきた。
しばらくそれを面白そうに見ていた悠舜だったが、落ち着いた所で声をかける。
「あの」
「ああ、すみません。何でしょうか」
いやに落ち着いた受け答えは、外見にそぐわないを過ぎてもはや不自然にまで達している。燕青が送って来た文に書かれていた通りである。
「私は鄭悠舜と申します。あなたのお名前を伺っても?」
少女は少し困った顔をしてから答えた。
「私は………と申します」
「そうですか。それで、私はどうやってここに来たんですか?」
は最初と違い、表情には全く出していなかったが、多いに驚いていた。何せ、ここは彩雲国の茶州らしい。そして目の前で優しく説してくれているのが、鄭悠舜だと言う。頭の中で鄭悠舜の人柄を思い出す。飛ばされたのがこの人の所で良かったと思う。今の時期茶州でそこらへんなどに落ちたら野垂れ死に決定だった。
「空から落ちて来ました」
「…………」
は自分の体を眺めた。左腕が骨折してるだけで、あとは掠り傷さえない。此処に来て急に体が丈夫になったのだろうか。
「そこを燕青が受け止めたんですが、申し訳ありません」
悠舜は腕の事を言っているのだろう。
「いえ、そんな。この程度ですんだのも燕青、様のおかげですし、悠舜様が謝られることではありません」
「……あなたは随分と大人びた話し方をなさりますね」
は少し困った顔をした。
これはの外見年齢に原因があるのだ。この室に送ってくれた者(どうやら浪燕青らしい)の自分への扱いに違和感を覚え、室にあった鏡で確認した所、どうやら自分は八つ程の子供になってしまっていた。八歳――ふっと浮かびそうになった記憶を慌てて沈める。はこの姿が好きでは無かった。
「少し長い話をしたいと思います。到底信じられないと思われる話です。証拠もこの服ぐらいしかありません。それでも聞いていただけますか?」
少しの沈黙後、頷いた悠舜には話はじめた。
自分はこの世界もしくは国の人間ではない事。外見と精神年齢が違う事を。
「そうですか……」
「最後まで聞いて下さってありがとうございました」
「いえ、あなたこそまだ辛いでしょうに。もうお疲れでしょう。私はこれで失礼します。何かあれば部屋の外の者に言ってください」
室を後にした悠舜は、部屋の外で待っていた燕青と合流し、歩きながらの話を整理しながら燕青に話した。話し終えた所で燕青が口を開いた。
「そりゃまた、すげえ話しだな。で、悠舜はどう思う?」
「ひとまず、茶家の刺客ではないようですし、言っている事もまるっきり嘘では無いでしょう。けれど……」
「けれど?」
「言っている事が全て真実とも思えません。後、気になるのはやはりあの落ち着きようですね」
「十代にしては落ち着きすぎだって?」
「ええ、少し心配になるほどには。一体彼女には何があったのでしょうね」
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