初めて出会う言葉に
ドリーム小説 起きたがまず気付いたのはここの季節だった。昨日はそんな余裕が無かったのだが、の体にはとても寒く感じられた。左腕を気遣いながら、もそもそと普段では考えられない時間をかけて服を着る。鏡を見て元の世界ではコスプレになると思うと笑えた。
「おはようございます!」
室の扉に立っていた兵士に、にこっ、と笑みを浮かべ挨拶すると少しして返事が返ってきた。兵士に丸い盆をわたされる。朝食だろう。散歩ぐらいしたいが、この時期だ、外出は禁止かもしれない。
室に戻ると卓子に丸い盆を置き、腕に響かぬようそっと椅子に座った。
湯気を見つめる。食欲など全く無かった。
昨日、は眠れないのを口実に寝台に寝転がっていろいろな事を考えていた。まず浮んだのは、怪我が治った後の身の振り方だった。二人の性格からして、すぐさま放り出したりはしないだろう。今の茶州の治安に不安はあるが、最低でも仕事先ぐらいは探してくれそうだ。ならば此処にいる内に何かしたい。今のうちに外見に会った話し方に変えようと思った。他はまだ浮ばなかった。
あまりの暇さに嫌になった頃、浪燕青が訪れた。手には昼食らしき、朝よりも激しく湯気を上げた汁物―――ではなく、おかゆだった。は別に病気ではないのだがと首をかしげた。
「ほい、昼食」
朝と変わらず食欲は無かったので、後で食べる事にして脇に置く。監視されているような視線。
「あの、何か」
「やっぱり食べないんだな。別に毒なんて入ってないぜ?ほら」
少し指で摘んで燕青は口に入れた。そんな事、は疑っていないのだけれど。
「食欲があまり無いだけです」
燕青が眉を寄せる。彼の性格からして心配している事はわかっている。けれど今は、生きている事事態が奇跡のように思えているのだ。それ良かったのかはわからないけれど。
「しっかり食べないと伸びないぞ」
言われた事のない台詞に一瞬思考が止まる。
「ありがとうございます」
それしか言えなかった。
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