あらゆる意味で、私は無力だった
ドリーム小説
男名でないと認めない。そういわれた日を今でも覚えている。

それは姉と慕う歌梨と共に、雅号を認めてもらおうとした日の事だった。雅号は本来、自分で自由につける事が出来、歌梨とも碧家に言うだけのはずだった。

「嫌!出して!出してよっ!」
頭の中で警告音が鳴り響き、必死になって扉を叩いた。
自分よりも、歌梨姉さんが一番心配だった。
自分とは違う。あの人は描くことをやめたらいけない。狂ってしまう。そんな気がして。
けれどその内手から血が出て、寝台に拘束された。
それでも自分の手で腕で、触れれる範囲の物を傷つけつづけた。

一月ぐらいたった頃だろう、見かねた食事係から純が来たと教えられて、は全ての攻撃をやめた。
そして、ここからは自分のための戦いだと心をひきしめた。
その頃になってやっと、柱になら爪で何か記せるのにとこの状態を惜しく思った。
天井を見つめる日々がどれ位たったころだろう、は解放された。
久しぶりの外は純粋に嬉しかった。
けれど、警告音はそのままで、気になって、すぐさま彼女の部屋行った。
誰もいない部屋には、ただ『おめでとう』と書かれた手紙があった。
「なん、で」
後悔した。歌梨を犠牲にしたと。
自分に出来る事を考えた。歌梨はどうしたら喜ぶだろう。
ためしに物を作った。
そして気付いた。自分も歌梨と同じ千年に一度の才能を得た事を。
自分はこれだと思った。これなら喜ばれると。

だから―――

「へい。そこの官吏さん。そうそう君、君。ちょっと協力してくれない?って、まってよ。僕はちゃんと許可貰ってるって。ほらほら!」
は作品を作り続ける。
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