需要に供給が追いつかない
ドリーム小説 魔法使いや幽霊が登場する映画は終盤に差し掛かっていた。
私の横では兄さんとクロロさんが何か話している。映画に意識を向けているので会話の内容はわざわざ聞かない。クロロさんが来たときに出て行こうかと聞いて止められたから、別に聞かれても困る内容では無いのだろう。
父さんはこの人と言うか(幻影旅団?)を余り好いていないので、クロロさんは直接兄さんの部屋に来る事が多い。必然的に兄さんの部屋によくいる私と会う機会も増える訳だが、特に話した事も無い、認識としては兄さんの友人程度だ。
映画では主人公が剣を振り回して、蛇と戦っている。私は諸事情で暗殺技術は余り教わっていない(むしろ教えてくれない)が見ただけでこの主人公は弱い。戦ったら私が勝つだろう、ただ問題は杖だ。先に折れればいいけれど……。

「はい?」
映画はもう終わっていた。兄さんに呼ばれて振り返るが、もう兄さんは横に来ていた。兄さんが横に立っても全く気付かない。そんな自分が少し嫌いだ。よしよしと頭を撫でられる。何だろう?
「プリン作るの好きだったよね?」
「?はい。甘いものを作るのは好きです」
「じゃ、決まり。クロロ」
嬉しそうに頷くクロロさん。何やら先ほどの話にはプリンが関係しているらしい。
「服や食事は全てクロロが払うから。安心しなよ」
「一体、なんの話ですか兄さん」
ここまで説明が無いと私も困る。
「クロロの所で暫く生活してくる事」
は?と言うにはもう遅く、クロロさんに抱きかかえられみるみる、兄さんやミケは遠ざかって言ったのでした。



「そう言う訳ですよ皆様」
卵黄とグラニュー唐を混ぜながら、私は旅団の皆様に事情を説明し終えた。何でこんな事を私が説明しているかと言うと、プリン作りを私に命令し、さっさと自分の部屋に引きこもったクロロさんは、皆様に私の事を知らせていなかったらしく、そのため血濡れで帰って来た皆様は私に殺気を向け、プリンを作りながら説明する事になったのだった。
「で、君の名前は?」
金髪のシャルナークさんが私に聞いた。
・ゾルディックと申します」
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大変なことになってきた10のお題(東から南へ三十度)
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