この先、狂気
スザクは時々、とても辛そうな顔をしながら僕にはなになにする資格はないんだと言う。
眉をハの字に下げて、翡翠の目を潤ませて、断定する。

それは何だか自分を貶めることが贖罪と考える罪人のようで、しばしば人を苛立せる。
そしてスザクはそれさえも自分が受け止めるべき物だと考えるところがある。
まるでそれはかさぶたを、さあ!はがしてくれ!と言っているよう。
彼はそれに追い詰められる相手の気持ちなんてこれっぽっちも考えもしない。
純粋で、それゆえに怖い。あまくてぬるくておそろしいスザク。

何時だろうその時はまだ何も考えずにいた私。
スザクは残酷ね。そう言った時のスザクの衝撃を受けたような顔が忘れられない。
すぐに何時もの諦めたような、苛々する表情に戻ってしまったけれど。

スザクってマゾだよね。怪我するのが望みなの?中途半端な優しさが、一番残酷なんだよ。偽善者ぶ ったまま死ねばいい。猫はスザクと違って鬱陶しい思考してないんだよ。偉そうなこと言わないでく れる!…消えちゃえばいいのに。ねえ、スザクはどうして酷い言葉に安心するの?ねえ。

ああ、彼の傷がまた深くなっって行く。

彼が死人のように肌を白くさせ、血を吐くようにして言葉を紡ぎ、私から遠ざかった日を忘れない。

なんて事を。僕に。
君だけはそんな事を言わないと思っていたのに。

そう言ったスザクを、私は許さない。

ねえ、スザク。私は何度でも希望通りにあなたのかさぶたを剥がしてあげよう。
そう何度でも何度でも。
そしていつかそのじくじくと血が滲んだ傷口に、一生忘れられないほどの傷を付けてあげよう。
ただの友人なんてつまらない肩書きなんていらない。

どうせなら憎んでよ。
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