屈辱のランチ、対面にはあなた
ドリーム小説 軍人には、否、人にはどうしても必要なものがある。
それは普通、希望しなくとも勝手にやってくるもので、場合によっては苦痛さえも人に与えるものだった。はず・・・。とジャン・ハボックは思う。
ところで軍人らしくがっちりとした筋肉質の彼の体は今、尊敬すべき大佐を後ろから羽交い絞めにしていた。普段ならとても後が恐ろしくて考えもしない行為であるが、この場合大佐のためという理由と溺愛する妹兼上司の命令だという理由があるので何としても大佐を自由にする事は出来ない。
「・・・っ、あ、ぐ」
そんな大佐は現在、少し妖しい(怪しいとならないのがこの大佐のむかつくとこでろだ)声を出しながら必死に口を動かしていた。
そっと上から覗き込めば、頬は屈辱的行為に赤くなり、目は今にも泣きそうに潤んでいる。
かわいいと言いそうになって、慌てて飲み込んだ。
悪趣味だと思っていたが、なるほど大佐に欲情する男がいるのがとてもよく理解できる。
そいつらが今の大佐を見たら、そろって襲い掛かりそうだ。
それほど今の大佐の色気はすさまじい。
うっかり意識を向けるとまた危なそうなので、前を見て、可愛らしい妹のみを見ておく事にする。

さて、ハボックが出会ってこの方愛でて愛して自慢してやまない妹のは、大佐の正面で少し微笑を深くしながらも、静かに怒りを纏って作業をしている。
と、手を止めた。少し周囲を見て。吐息と共にハンカチを取り出す。
何のためらいも無くぐいぐいとそれで大佐の口元を拭った。自分には出来ない、さすがだ。
軍規定の白いハンカチが、少し鈍い色になる。
それを見たのか、大佐の体にまた少し力が入った。
それに気づいているのか、いないのか。いずれにしろ躊躇せずには作業を続けていく。
「・・・ぬるい」
ぽつりと大佐が不満をもらす。
「そうですか」
取り付く島も無い。
「お前は・・・ぐ・・・む・・・」
「はい後これだけですから、ね」
に目線で、拘束を解いてよいと合図される。言われたとおりにすると、腹立たしげに大佐はハボックから離れた。苦笑して、の横にまわる。
ばく、と最後の一口を大佐が口の中に入れる。飲み込んで、憎しげに片付けをするハボック達を睨んだ。
「全くお前らは・・・」
「大佐への愛情と受け取ってください」
「軍人は食べないとですよ、大佐〜」

一日一度は固形物を摂取して頂かないと・・・またしますよ?とは笑って言った。
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