残されて、ふたり
ドリーム小説 クィリナスが死んだ。
いや、負けたと言うべきなのだろうかこれは。
アルバニアから帰って来てからというもの、様子がおかしいのはセブルスから聞いていた。
ターバンを巻いて、にんにく臭をさせ、いつもなにかに脅え、どもる教授なんて、冗談だとしか思えなかった。
彼からの手紙は相変わらず聡明さを感じさせてくれたけれど、間隔が伸びていることもわかっていた。でも近寄らなかった。やんわりとクィリナスが近寄らせてくれなかった。
だから、ホグワーツに行った時も顔を出さなかった。セブルスにだけ会って、まるで異国にいたころのようにクィリナスの話をして、それだけ。

「………っ」

何年も何年も遠い地にいて、マグル学の教授になった彼。
最後に会ったのは二年前。
一年ほど修行してくると、ゆっくり話もせず、行き先だけ告げて去って行った。

近づかないでほしいと、間接的な言葉を何度も使って、祈るように、自分に察して欲しがっているのが読みとれたから近づかなかった。
それを望まれているとわかっていたから、最後まで、踏み込まず。
でも、本当にそれで良かったのだろうか?
こんな、見覚えもない、彼の気配を感じない、うすっぺらな服しか残らなくなる前に、会いに行けばよかった。
どうしても会いたいのだと我儘を言えば良かった。

「……

耐えきれなくなった涙が、クイリナスが最後に来ていた服に染み込んでいく。
子の手が無ければ、いますぐクィリナスのもとに行けるのに。
この自分と同じ、それ以上に傷付き悲しんでいるこの薬品臭い親友がいなければ。

クィリナスの服を抱きしめたまま、彼の背に手を回す。臭いにつつまれる。
決して置いて行けやしない。彼にまで置いた行かれたら、今度こそ耐えられない。
そうきっと。



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