お風呂で相談
ドリーム小説 の屋敷には今、私達とフェルリナ達夫婦が住んでいる。
結果的に昔よりも人数が増えてしまったため、屋敷しもべ妖精達の数も以前より少なくしようとしたが…本人達の希望でやめたので変化は無い。皆古株ばかりで居心地がいい。
ラナも今や私達四人のお茶の時間を仕切っている。
そんなの家に出戻りした私は、の土地で薬草と魔法薬の売買をして生活している。
レギュラスとはじめて夏を過ごした裏山は、半ば私の畑となり、ところどころに魔法でビニールハウスが建っている。
そこで薬草を摘んで、水洗いをし、乾燥させる。
先日乾燥を終えた薬草を箱に詰めて、フクロウで送る。
さて研究に戻ろうかと思った所で、フェルリナがマグカップを手にやって来た。
外出する予定でもあるのだろうか、何時もは降ろされている金髪は綺麗にセットされオールバックになっていた。
まだフェルリナの年齢でオールバックにしなくとも思うのだが、そこはの当主として色々あるらしい。威厳とかだろう。
純血との交流も避け、引き籠っている私には何も言えない。

「姉上、少しは外に出て下さい」
「庭には出たわよ?」
「敷地内では認めません。と、前にも言いました」

とっくに成人したというのに随分と過保護なことだ。
レギュラスが死んでしばらくは随分と心配をかけてしまったから仕方が無い。
あれからもう今年で三年目になる。
そろそろ再婚してもおかしくはない。純血で厳しい親のいる家庭ならばなおさら。
そんな存在は私達にはもういないし、フェルリナは決してそんなことを私に勧めないけれど。

「…まだまだ無理だなぁ」

一人を一生思い続けるなんて一途な人間ではないが。
私はそう切り替えの早い方ではないらしいので。



おそらく酷い臭いがしているんだろうなと思いつつ、地下室を出て、バスルームに行く。
子供のころ親の目を盗んでシャワーしか浴びない生活をしていた反動か、大人になった私は随分と入浴が好きになった。
ふやけるのは嫌だから書物を持ち込むことはほとんどないが、入浴剤を入れぼーっと長湯する。
気を抜きすぎてうとうとしていしまう事もある。
余りすると、大体において発見者となるラナが取り乱すので、少し困る。
さてどんな入浴剤を入れようかと思いながら服を籠に脱ぎ捨てて、髪を上で纏め、選んだ入浴剤を持って扉を開く。

「え!?」
「・・・」

…これは謝るべきなのだろうか。

24にもなってお風呂で異性と遭遇してしまった。
いやでも半裸ぐらいなら今朝も見た(治療した)のだが。

「…まあいいや」

一応名家の屋敷の風呂であるから広いし。それにこんな状況で手を出すような人間でないという信頼ぐらいはある。
そしてなによりものすっごーーーく私は入浴したいのだ。
そう判断して足を踏み出すと、リーマスは慌て出した。

「ええっ!?まって!どうして入ってくるんだい!」

面白いほどの慌てっぷり。遠い昔に捨てた私の乙女心を思い出させるほどだ。
けれど彼を無視してすたすたと歩き入浴剤を壁際に置いて湯船につかる。
何を入れたのだろうふんわりと花の甘い香り。
知らず知らずに冷えていたのだろう。じわじわとして気持ちいい。

「ふー………んー…どうかした?」
「………なんか寂しくなって来た」

意味が分からないのは昔からなのでスル―する。研究に関係ないことで彼に興味は無い。
それよりお風呂を満喫しなければ!
どれぐらい浸かっていただろう。

「そろそろ再婚するべきよねー」

世間話が途切れた時に、何とはなしに口をついて出た。
自分でも驚く。やはり気が抜けているのだろう。まあ、軽く隔離されているリーマス・ルーピンに知れた所で問題は無い。

「もう3年だっけ?」
「ええ」

彼が私に生きろと言葉を残して3年。

「…僕も一応純血ではあるんだけどね…ほら狼人間だから。パーティーにもほとんど出たことがなくてさ、名家との繋がりもないからね」

純血世界での一般的なことはよくわからないとリーマスは言った。

「でもフェルリナはそんなこと言わないよね?じゃあ、が決めていいんじゃないかな。がもういいって思った時とか、…恋人が出来てからで」

普通の女性の様に。

「…そうかな」

曖昧に微笑む。
それはまた随分と魅力的で難しい提案だ。
だって私は……おそらく恋なんてしたことがない。
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