闇晴れて
ドリーム小説 バスケットを片手に、ホグワーツの禁じられた森とは違い、どこか荒れた雰囲気を感じさせる森の中を進む。
たどり着いた小さな小屋の扉。異様なほどにつけられた鍵達。
これでもかとつけられたそれらを、なるべく音を立てずに開けて行く。
これぐらいで起きる筈が無い(それだけの物を飲ませている)と思いながらも、扉もそっと開けた。
薄暗い中で倒れているものを近づいて観察し、記帳する。それが終わると、次は治療だ。
それから数時間後、再びバスケットを持って小屋を訪れる。窓が開いていた。
出迎えたぼろぼろの男に、バスケットを手渡す。

「……怪我は少なかったけど、気分はどう?」
「これっ!限定チョコじゃないか!?そうたしか限定20人の!どうやったんだい」
「………」

喜んでいるようで何よりだが、相変わらず意思の疎通がしにくい男だ。

「…つっとごめん。

冷たい視線を感じたのだろう。ごめんごめんと謝ってくる。

「で、気分はどうなのかしら?リーマス」

バスケットに入れて持って来た昼食を広げながら、明るい所でリーマスの体調を確認する。
顔色は青白いが何時も通り。

「これタルタルソースかな?おいしいね」
「ラナのオリジナルなのよ」

サンドイッチを手に取った時に見える、布切れに近いシャツから覗く腕には新しい怪我の痕。
何時も(毎月)のことながら思わず痛そうな顔をしたくなる。
この年になってはさすがにもう表に出すことはしないが。
ここしばらく魔法薬学漬けの生活を送っているが、薬の進歩は微々たるものだ。
セブルスがいればと思わなかったこともない。
私ごときの能力で可能なのかと常に思っている。
それでもホグワーツにいた頃よりはましな状態になっているので良しとしようと思う。
雑念を払い、再びリーマスを見る。
私が彼を名前で呼ぶようになってどれぐらい経ったのだろう。
時が過ぎ去るのは速いものだ。
私達がホグワーツを卒業してはや5年。ヴォルデモートは失脚し、世界は平和になっていた。
とても多くの犠牲を払って。



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