出合ってしまった
ドリーム小説 休暇前のダンスパーティを終えてやって来たクリスマス休暇。
私は魔法界の王家と名高いブラック家を訪れていた。
純血名家の者にとって、一種の義務で仕事なダンスパーティがあるからだ。
昔は勝手ながら敵と認識していたブラック夫人が、冷たい目で歓迎してくれた。
見るからに高慢そうな顔つき。けれど、私の母よりは随分付き合って行けそうに思えた。
何処か暗く黒い屋敷。
私も数年後にはここのプリンセスになるのだ。

怒るか拗ねるかするだろうなので言わないが、レギュラスはまだリトル・プリンスといった感じなので私もリトル・プリンセスとなる。

「…今晩ドレスに着替えたら、一番最初に見せて下さいね、先輩。他の男が見る前に」

こんなことを早朝、美しい街並みを背に囁いて来る奴だ。
腕をとらえて夜ならまだしも、朝に言って来る(しかも年下!)は始めてだ。
不本意ながら赤くなってしまい、いっそのことスイート・プリンスとでも呼んでやろうかと思った。



いくら婚約者とはいえ人様の屋敷の中を出歩くのは行儀が悪いのだが、夕方の衣装を着るまでの時間が中途半端にあったのでこっそりと出かけてみた。
別に何かを狙ったわけではなかったのだが、今思えば妙な勘が働いたのだろう。悪い方向に。
もしくは運命とやらの仕業か。
でなければ、何故この屋敷でばったりとこんな人に出会うのだ!
その存在感にぎょっとして立ち止った私に、黒髪の綺麗な男性(もしそれだけだったら何と良いことか!)も立ち止まる。

「こんにちは」

にっこり綺麗な頬笑みを向けられる。赤い目は全く笑っていない。
それはこの世界ではよくあることだから(とくに今夜は沢山出会うだろうから)気にはならないけれど。

「…っこんにちは」

動揺なのか緊張なのか、煩い動悸を抑えながら挨拶をする。
この人が何なのかなんて考えてはいけない。身を滅ぼすことになる。

「はじめまして。私はと申します…お名前を伺ってもかまいませんか?」

まずい。それさえわかっていれば大丈夫。
ふっと、その綺麗な人は驚いた表情をして、しかしすぐにもとの表情に戻った。

「僕は…そうだねリドルと呼んでくれないかな?とりあえず今は」

こんなあからさまに偽名を名乗る人も珍しいなと思ったが、不思議と怒りは感じなかった。
むしろ薄らと良いものを感じる。満足感と言うのだろうか、優越感いや、光栄と思っているのが一番近いのかもしれない。
尊敬をする教授に褒められたかのような…。
はた、と思いあたってしまい。思わず首を振った。
いやいやいや…私に選民思考は無い。そんな確率の低いことはまずないだろう。危ない危ない。

「君は、聡明だね」
「!」

正解を本人から貰ってしまった。
怖いほど綺麗な人…いやサー・ヴォルデモートにこんなとで出合ってしまうだなんて。

「そして身の程をわきまえている。用心深い。けれど欲深くもありそうだ。どうして君のような子がグリフィンドールに入ったんだい?」

何だか出会うことが仕組まれていた気がして来た。
というか聞かなくても知ってるだろうこの方は。

「……昔から絶賛反抗期中のシリウス・ブラックと離れてゆっくり純血の相手を見つけるためです。裏目に出ましたが」

しかも当初はグリフィンドール生からのストレスさえも多々感じることになった。
私も所詮浅はかな12歳の子供だったのだと思う。なんて、後悔する気はさらさらないが。

「そして今はレギュラスのものになった?」
「順調に行けばですが」

そしてレギュラスが死喰い人になれば(なってほしくないが)、私はこの人にも間接的に従うことになる。
そういう意味では一度お顔を拝見しておいたのは良かったのかもしれない。

「ふ…楽しみだ」

そういってまさかの目まで笑って下さったのだが。
すいませんどこ(の考え)を読んでのお言葉でしょうか。



← back to index
template : A Moveable Feast