仮装パーティー
ドリーム小説
「ー」
その日の夕方、談話室で力無い声に呼ばれてみれば、ジェームズがソファーの背に頭を乗せてこちらを見ている。
このところずっとそうだが、何処が不満なのだろう。
ちょいちょいと手で招かれて横に座ると、ぐいと引きよされれた。
肩と腰に腕をまわされて顔がとても近い。
「ちょ…っ!?」
この間のブラックにも勝る近さだ。
ここ談話室なのですが、誰かが入って来たら直ぐに見えるところなのですが。
「ねえ。」
息が、頬にかかってるんですが。覗き見た笑顔が恐い恐い。
「純血の家の君とは価値観が違うのかもしれないけど…」
「…」
「君は本当にレギュラスのことが好きなの?」
「?」
何を言っているのだ。この人。
この年にもなって何だが、男に貢がせることもなく真っ当なデートをしてきたというのに。
「たしかに弟君はの事が好きだろうね。けど君は?」
ジェームズの頬笑みが深くなる。
「…誰でもいいんじゃないの?」
「随分な言い草だね」
本当に。
自身の不安を言い当てるのはやめてほしい。
「…それより、昼間のあれは私達を狙ったの?」
私が答えないことに不服そうな顔をしながら、ジェームズはいやと答えた。
「僕はそんなことしないよ」
そうだろうと思っていたけれど。
「僕は?」
「うん。僕はこれからもずっと、ね」
近距離で器用に流し目をされる。全く持って色っぽくない。
「私に不服なんだね」
「んーどうなんだろう。というより、弟を取られて寂しいんじゃないかな」
「うわブラコン」
「君もだろ?」
「否定はしない」
フェルリナが可愛すぎるのだ。
レギュラスとの時間も増えつつ、かと言って課題や友人達と過ごす時間を削る気にもならず、忙しい日々を過ごすと直ぐにハロウィンが近づいて来た。
森番のハグリッドがカボチャをホグワーツに運び入れ、望んだ生徒達がその手伝いをしている。
悪戯仕掛け人達もそれに参加することにしたようで、グリフィンドールの談話室にはいつの間にかカボチャが積まれていた。
「やあ。ジャック・オー・ランタンを作らないかい!!」
魔法でカボチャをくり抜きながらそう声をかけてくるジェームズに手を振って断る。
廊下を歩くだけで日に日にと学校中が浮かれ雰囲気に包まれていくのがわかった。
飾られて行く、去年よりも随分と手の込んだ装飾。
その理由はダンブルドア校長が何を思ったか強制参加の仮装大会をすると言い出したためだ。
クリスマスのダンスパーティではないので、相手を決める煩わしさも興奮(?)もないが、それでも仮装となれば盛り上がるものだ。
「リリー」
ふふふと楽しそうに黒い衣装を着て吸血鬼の格好をした妖しいリリーが化粧をしてくれる。
吸血鬼は男がするものではとか、ジェームズがリリーに見とれる姿が目に浮かぶとか思いつつ、じっと耐える。
これは何を目指しているのだろう。
穴をあけたシーツ辺りで顔を隠して目立たずにいようと思ったのに。
(理由を話さずに)顔を隠したいのだと言うと、手渡された大きなピンクの伊達眼鏡を付ける。
化粧も相まって確かに誰だかわからなくなった。
「…眼鏡をした黒猫って」
これでいいのかは分からなくなったが。