落ち着かないデート
ドリーム小説 セブルスが正しかったよ、ふん(鼻で笑って)そうだろう…良かったなレギュラス、はい先輩みたいな会話をして、セブルスは私とレギュラスのこと(といってもその前に婚約者なのだけれど)を喜んでくれた(様に見えた)。
若干それよりも大きな実験を成功させた時のような、疲労感が見えたのは何故だろう。
それ程迷惑はかけていないはず。

「てっきり、クィリナス先輩の事が好きなんだと思っていました」

レギュラスに連れられて入ったスリザリン寮(彼を止める者がそうそういるはずもない)で図書室にいなかったセブルスにそんな報告をして、寮に送ってもらっている間に彼はそんなことを言った。

「?…ああ、違うよ」

気持ち寄せられた眉、それでもきれいな顔に見えるから美形って得だ。

「みたいですね。何だか一人で焦ってしまったみたいで…」

しゅんとして、拗ねている様に見えた。

「損した?」
「してません!」

レギュラスはかわいい。
けれど私は別に彼の事を(彼の言うような)本気で好きなわけではないのだと思う。
そもそも未体験の領域なので何とも言えないが。
それを(未体験だと)話すと。大げさなほどにレギュラスは驚いた。

「ええっ!あれだけの…いえ、だからですか」

色々と噂に聞いていたのだろう、少し頬を染めて(もう演技ではないと信じられる)レギュラスは納得した。

「そう」

同一視したくないけれど、おそらく彼の兄と同じ。
(下品だが)行きつくとこまで行っているのに、感情が全然付いてきていなかったのだ。いや、切り捨てることを選んでいた。それが最善だと思っていた。向けられる感情に正面から向き合ってこなかった。
だから妙に今、緊張する。
例えば、こうして一緒にいるだけなのに温かいような居心地の悪いようなむず痒いような気になるのだろう。
さぞかし今の私は微妙な表情をしているだろう。



私とレギュラスが仲良くやっているという話は、直ぐにホグワーツに広まったようだ。
レギュラス・ブラックへの告げ口を恐れたのだろう、大っぴらなものは減った。
一人の時の不意打ちはまだ多いが。
かわりにスリザリンの一部からは声をかけられるようになった。
婚約を知っているのかと思えばそうではなく、レギュラスが特定の彼女を作ったためらしい。
今更だが、周囲から見て私は相当酷い女ではないだろうか。
レギュラスもシリウス・ブラック並ではないが女遊びはしていたようだけれど、私ほどではない。
私は純血の男遊びが激しく、流血沙汰を起こしたこともある(本人が医務室行き)。現在それほどの権力のある名家でもないのに、向こう(レギュラス)から告白させている。しかも当初は、周囲が見ればかなり素っ気なくしていた。
年上の悪女にお坊ちゃんが引っかかった図だ。よくこれで、ブラック家の方々から突っ掛かられないものだ。

「寒くないですか先輩」
「大丈夫だよ、レギュラス」

その日、私達はホグズミードに来ていた。待ち合わせた三本の箒で見つけたレギュラスは、シンプルな格好だったけれど普段よりも断然かっこよく見えた。

「じゃあ、行きましょう先輩」

そっとレギュラスが私の手を握る。
その瞬間デートなんだと実感してしまった。
今年最初のホグズミード休日は、秋のまっただ中の十月だった。
店が立ち並ぶ石畳の上にも、何枚か茶色い落ち葉が散っているのが見える。それぞれに満喫する沢山の生徒の中を上手く避けながら、ガラス張りのショーウインドーを覗きこむ。
レギュラスは入りた所があったら言ってくださいねといったが、これまで言わずともの男に買ってもらってばかりだった(そしてそれを躊躇わなかった)私としては、どうしたらよいのかわらなくなって妙に緊張してしまう。
レギュラスがそんな私をどう思うか気になって、ちらりと見ると、何ですか?と嬉しそうに声をかけられた。
調子が狂う、居心地悪い。でも不快ではない。
そんなこんなで、未来に思い出したら甘酸っぱく思うだろう状態で歩いていたら、人だかりを越えて前方から何かが飛んできた。

「!」

この頃成長した直感と危機管理能力で、身を寄せて道の端による。
パン!と音を立てて近くにそれは落ち、いやーなにおいが辺りに漂う。
悪戯グッズだろう。セブルスなら(本人不本意にも)これが何かわかるだろうが、そちらに詳しくは無いので名前までは解らない。幸い私達には飛び散らなかったが、周囲には被害を受けた者もいるようだ。

「クソ爆弾ですね」
「…そんな名前だったんだ」
「ゾンコの人気商品です」

良く知っている。

「とりあえず、ここを離れましょう」
「そうね」

レギュラスの後に続いてそこを離れながら、そっと懐から愛用の敵鏡を取りだす。
鏡に映った者に足を止めた。鏡にはぼやけてはいたが、悪戯仕掛け人達が映っていた。
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