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ドリーム小説 「ダンスパーティ?」
「うん。そう」

それは授業開始翌日の午後。久しぶりにクィリナスと二人で、芝生の上で寛いでいたときのこと。
確かに今年はダンスパーティが予定されている。
けれどそんな選択権のない話をしてどうするのだろう。

「そんなのレギュラス…」
「それは結果の話。僕が言ってるのはの気持ちの話」

それはまたなんともクィリナスらしい質問だ。

「……無難に」
「却下」
「…じゃあ」
「却下」
「……」

そんな会話をして図書館経由で寮に戻り、本を一冊取ってソファーに腰掛けると、入り込む間もなくジェームズがやってきて横に腰掛けた。
視界の端で見ただけだったが、悪戯仕掛け人と一緒ではなかったかと本から視線を上げると、丁度ルーピンと視線が合った。その後ろからシリウス・ブラックが睨んできている。

「……何の用かな、ジェームズ」

十中八九彼がこちらに来たのは私のせいにされているだろう。
ルーピンとブラックを見たまま(私から睨んではいない)彼にそう聞くが返事は無し。
視線を戻せば、ジェームズは私が読んでいた以外の本を興味深そうに捲っていた。
かといって声が聞こえていないはずもない。

「ジェームズ」
「用が無いといけない?」

完全に気軽な友人にされたようだ。
まあたしかにあれだけ本性を見せられればそうも思うかもしれない。
私も少し前に感じていた、関わりたくないという思いはもうない。

「……」

肯定するのは何だか癪で、勝手にすればいいと思ったので私も本に戻る。
決して薄くは無い本の中程で目の疲れを覚えて本を閉じると、何度か瞬きをする。
再び目を開けた時、目の前の机には紅茶が用意されていた。
ご丁寧に横に置かれたポットにはティーポットカバーまでされている。明らかに私向けだというように。
談話室はいつの間にか静まっていた。
だけど……いやまさか。
ジェームズでは絶対にあり得ない。人柄的に(結構失礼)。
となるとリーマス・ルーピンしかいない!
そのルーピンは私とジェームズがいるソファーの横で眠っているようだ。彼の前にも、紅茶が置かれている。

「ジェームズ!」

小声で、読書の没頭中の彼の肩をゆする。

「ん〜。…?」

少し驚いた様子のジェームズに私は推測を説明する。
ジェームズは目を輝かせた。
やったねって…私は何もしていないんですけど。
私の手を握り締めて言われても…ねえ?

「ジェームズ?」

げ。

に何してるのかな?」

背後から何か邪悪な気配を感じます!
ジェームズの笑顔が固まっている。すごく嫌な予感がするのですが、いやあああああああーーーっ!!!!



少しでも友情を感じたのが間違いだったのか。そうなのか。
非常にもジェームズは何だかんだと早口で行って、さっさと逃げて行った。
そんなわけで私は今、私とリーマスは(ほぼ)二人きりだ。
二回も空き教室に連れ込まれた奴を二人きりにするな、ジェームズ!!
言ってないから知らないだろうけどね!いや何だかジェームズなら知ってそうだよ。
必死に視線で訴えたのに、全くスル―された。というか生贄にされた?
どうにも私はルーピンを人間として扱えないようだ。どう見ても人間なのに。

「えっと…?」
「…え、あ、ごめん」

気付けば、ずいぶんとまじまじと見てしまっていたらしい。うわ、恥かしい。

「この紅茶…」
「ああ、僕が入れたんだ。紅茶は嫌い?」
「ううん。好きだよ。もらっていい?…ありがとう」
「……うん」

ルーピンは少し目を細めて視線を逸らし、はにかんだ。
まるで何かをかみしめる様に。

「……」

それを私は…かわいいかもしれない。否、かわいいと思ってしまった。
昨日と同じく袖口から包帯が見える酷い様子で、整っているとはいえ顔色も悪いというのに。
私はルーピンを随分と誤解しているのかもしれない。
なんて。
冷めた紅茶を飲みながら、思う。
これを飲んだら、ティーポットから冷めていない紅茶をもらおう。心なしか、目の疲れも取れて行く気がする。

「あのさ、
「なに?ルーピン」
「ジェームズとその…何してたの?」
「何って…」

どう説明しろと?
というかまた悲しそうな顔をされるのは何故ですか。




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