盾の呪文
ドリーム小説 (策を練って)何も言わない私に、シリウス・ブラックは苛々とし始めた。
このまま出て行ってくれるとありがたいのだが。
下手に刺激すると攻撃されそうだし。
けれどここにはジェームズもいる。ストッパーになって貰うか。

「ブラック家から家出したあなたには関係ないと思うけれど?」

いやはや公式以外で一体何年ぶりに話しかけたことやら。それがこの言葉とは私も酷い人間である。
けれど彼はもうブラック家の系図から抹消されたのだし、嫌うなら徹底的に避ける程に嫌いになってくれないだろうか。そうなると未来の兄と逆の意味で相思相愛になるのだろうか。
表現を間違えたようだ。気持ち悪い。
思った通り、声を荒げたシリウス・ブラックは杖を構えて呪文を放つ。
けれど挑発したのは私だ。タイミングぐらい自分の良いように調節している

「プロテゴ・ホリビリス!」

(本気を出して実際に)学ばせてくれた母親に感謝。
おかげで私達兄弟は傷つける気のない相手から攻撃されそうな時、最上級の盾の呪文物が自然と口をついて出る様になった。
去年のようにな上級生からの攻撃や不意打ちにはまだ完全対応できていないけれど。
視界の端でブラックを止めようとしていたジェームズが興味深そうにしている。よかった。一対一。
それなら潜って来た戦場(ほぼ全て実家だけど)がそれこそ違う。
攻撃が弱くとも、優先すべきは自分の安全だ。
よく攻撃は最大の防御というが、それは互いに殺す気以外では諸刃の刃であると思う。時間稼ぎも時には必要。
特に感情を高ぶらせた相手には。
久々に平穏な日常に要らない(使いたくない)呪文に感覚が戻ってくるのがわかる。好戦的な顔になって無いといいが。
セブルスにちょっかいを出す様子からは、反応を楽しんでいる気もするじ。そういう人間のだろう。
それをいうと悪戯仕掛け人全員に言えることになってしまうが。
睨みあってもブラックは出ていく気配が無い。
溜息が出る。
嫌になったので杖を下げた。無論その最中に飛んできた呪文からは身を守ったけれど。

「…もういい?」

面倒そうに言い捨てて、返事を聞かずに扉に向かう。
無論何時でも防御の呪文が出せるようにしながら。
そしたら思わぬことに、廊下で足音とともに手を引かれた。

「で?僕にも教えてくれいないの?」

その頬笑みは何ですか、少し前の思考を呼んだんですか。

「………ジェームズ」
「うん?」

目を丸くしてきらきら……にっこり。
そういえば名前を呼んだのは初めてだった。
その時点でこの男に絆されているのだろうか。

「……………」

絶対普通にしてたらセブルスを攻略できるよこの男。何故に仲が悪いのか。
セブルスはこうゆう人間に弱い。面倒見がいいから、嫌味を言いつつ何だかんだで言うことを聞いてしまう。

「もちろん、シリウスあたりには他言無用にするよ?」

あたりとはルーピンの事も含まれるのか。
いや、あんな得体のしれない奴知られようとどうでもいいけれど。訂正、何だか悪用されそうで怖いが。けれどそれをいうと一番ジェームズが怖い。かといって言わないと彼は纏わり付くだろう。
一回やられているとはいえ、あれより本気を出されると不味い。


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