挨拶されて
ドリーム小説 彼は、夕食にやって来た。
最初に反応したのはやはりというか、シリウス・ブラック。

「レギュラス!?何の用だ」
「貴方にではありませんよ、兄さん」

そんな会話がされて、ああ自分に会いに来たのだと理解した。にしてもこんなところで挨拶しなくてもいいだろうに。
フォークを置き、呼ばれるまでもなく体を回転させ振り向く。
すると、言い争いになりかけていたシリウス・ブラック綺を綺麗に無視して、レギュラスが私の前にやって来た。
綺麗な微笑みを浮かべたレギュラス。同じく私の顔にも(綺麗でしかない味気のない)微笑み。

先輩」

まだソプラノの声とその微笑みに、違和感。
手を取られ、指先に口づけ一つ。
指先の手入れぐらいしておけばよかった。手は洗ったが、薬草臭かったら申訳ないレギュラス。
周囲からどよめき(というか八割女の子達の悲鳴)があがる。
これからこの嫉妬に耐えるのか…うわ…激しく面倒。
にこりと微笑みながら、優雅にしているが少し痺れてくる腕に早く手を解放してくれないかと思う。
こんなことをするのは何年ぶりだろうか。
お嬢様は大変なのだ。
が、レギュラスは何も言わない。

「……?」

にこりと笑いながら、首を傾げて先を促す。
レギュラスが先に話すので、礼儀として間違っていないはずだ。
これからよろしくお願いしますいいえこちらこそ…で終わりではないのだろうか。
わたしなら前置きを省いてそうする。
場所が場所ならもっと丁寧に話すが、(校長には悪いが)こんなとろこではその必要もないだろう。
私の困惑が伝わったのだろう、レギュラスは困ったように笑った。

「僕はやっぱり素の貴方の笑顔が好きです」

硬直。
は。
はいぃ?
もしや天然、たらしですか?
と冷静に考えながらも徐々に顔が赤くなるのがわかる。
うわぁ、不意打ちだ……!
美形なんだよレギュラス。
その辺理解しているのか?
してるよね、君の兄さんモテまくりですから。
まさしく手当たりしだいが出来る、飢えた獣ですから。

「おい、レギュラス!」

暴走した思考が収まる暇もなく、何故かシリウス・ブラックが割って入った。随分と驚いた表情。
それを至極鬱陶しそうに、レギュラスが睨む。

「何ですか兄さん。邪魔しないでください」
「いやいや、どうしたんだお前」
「どうしたもこうしたも兄さんには関係ないでしょう。ね、先輩」

そこで私に振るな。
答えない私を気にせずに、レギュラスは話を続ける。

「僕も先輩も兄さんなんて大嫌いなんですから、さっさとお友達の所にでも行って下さい、不快です。そもそも僕が兄さんに用事がある時なんて滅多にないじゃないですか。ああ、あっても出来る限り手紙で済まします」

『お友達』を強調するようにレギュラスが言う。というか何とも酷い言いぐさだ。
まあ、私がシリウス・ブラックを嫌いなのは事実だけれど。
ブラコンの私としては、絶対に弟に言われたくない言葉なのは確かだった。
言われたら泣く、絶対。

「レ、レギュラス!」

が、この反応により、シリウス・ブラックはブラコンであると決定した。これはもう間違いない。
普段なら良い気味だけれど…さすがに(同じブラコンとして)同情します。
で、挨拶はまだ終わらないのでしょうかレギュラス・ブラック様。


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