視線が痛い
ドリーム小説 休暇後、ホグワーツへ向かうまでのコンパートメントは私、フェルリナ、レギュラスにクィリナスにセブルスと、これでもかと緑なスリザリンだった。
周囲の視線が非常に痛いのだが。
レギュラス、フェルリナに近づかないでよ!とかグリフィンドールがとか、何気に人気のあるクィリナスにセブルスにまたあの女が証拠にもなく!とか美少年たちに囲まれてとかそういう視線ですよね。
はい。すみません。
でもまさか、私もこんなにスリザリンだらけになるとは思っていませんでしたよ。
逃げたかったんですよ!
フェルリナが横にいるのはいい。だって兄弟だからと言える。
クィリナスにセブルスも視線を我慢することにはなるがいい。
(恥ずかしいので言わないが)手放したくない大切な友人達だ。
問題は彼、今や王族(彼らの両親は本当にそう思っている)ブラック家の次期当主確定、兄ほどのカリスマ性はないが美形のレギュラス・ブラック様だ。
シリウスブラックが家出とともに完全に家系から抹消されたせいだろう。彼への視線が多い多い。
話題の人にして、純血の方々(特に女性)のトップターゲットだ。
その方が堂々と横に座り、楽しそうに笑っていらっしゃる。
不味い。非常にこの後の私の体が心配だ。
彼が家に来たのは初めてです。ちゃんと会話したのもこの夏が初めてです。彼はフェルリナの友人です。…名前で呼び合ってますけど?
駄目だ、殺される(心配症の友人たちに、私が)。最後を何とかしないと。
呼び出し自体はまあいい。けれど、またあのような流血をしたら…面倒だし。なにより周囲(特にマダム)が怖い。
そう思って、幾度と頼んでいるのだが。全く耳を貸さないんですこのお坊ちゃん。
とかなんとか言いながら、私はホグワーツに帰れることに浮かれている。
毎年毎年…ホグワーツで友人が、自由が増えるたび、いい加減本当に嫌になって来た。
本気でシリウス・ブラックのように家出してやろうか。
しかしどこに?そんなことをしても卒業後にはどこかの籠の鳥である。似合わないけれど。
そう思って笑ったら、自嘲が顔に出てしまったのだろう。レギュラスに心配をされた。
申訳ない。それさえも今の私には後々の面倒事の種になりそうだ。



セストラルに乗る手前でセブルスを捕まえて、馬車に乗り込む。
セブルスは一瞬困惑したものの、意図を察して、おとなしく従ってくれた。おそらく彼も、私がどのようなことを危惧しているのか予想できたのだろう。
そこからは無言。ガタガタとした音だけが聞こえてくる。
そういえば、セブルスにはセストラルが見えているのだろうか。
見えていない状態に興味が沸いたが、無駄骨になる可能性と、見えることを説明するのが面倒で(それよりも見える理由を説明するのが嫌で)止める。
こんな時代だ、見えているものの方が多いのかもしれない。
ホグワーツに付けば、また相手探しをしなければならない。これだけ引っかけても駄目なのだから、もしかしたら私の基準に問題があるのだろうか。
いわゆる高望みはしていないつもりだ。
ほぼ全て両親が納得する程度。
純血で、見苦しくない程度の顔で、酷くない成績で。出来れば純血主義でなく、暴力を振るわない者。…異常性癖の無い者。
一人、夏休みにも浮かんだ人物に、溜息をつく。
今のところ条件は完璧なのに…何故か気が進まない。


「…なに?」
「顔色が悪いぞ」
「………そう」

どうしても私は嫌なようだ。
もう二年しか猶予はない…二年しか自由はない。
こんなふうに友人と同じ馬車に乗ることも、おそらくは。

「セブルス……」
「?…なんだ?」

やっぱり君も、死喰い人になるのかな?


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