それこそ今更
ドリーム小説 結局、彼らのコンパートメントでレギュラス・ブラックの言いたかった事をまとめると、私の弟のフェルリナを通して知った私とあのブラックとのこと(というとまるで一対一で何かあったようだが)を彼は前々から気にしていたという。しかし、運悪く私とはブラック家でのクリスマスパーティでも機会を持つことが出来ずにここまで来て、今度こそはと思って私を追いかけたらしい。

「兄さんは本当に全くそのことに気付いていないようなんです。あの人は自分が負かした相手のことなんて考えもしないから…」

本当にスリザリンなのだろうかこの子は。

「レギュラス先輩はそういうところが可愛いんですよ」

にこにことまるで年下か何かの友人を語るような弟の言葉に、いやいや、向こうは年上でしかもブラック家の次期党主だと言いたくなる。けれど向かいに座る当の本人は平気そうだ。
まあ、それが彼の魅力なのかもしれないけれど。

「ああ、レギュラス先輩と呼んでいますよ。無論。先ほどは少し失敗をしてしまいました」

そう言って、恥ずかしそうに頬を染めるのはとてもかわいい。
怒るから言わないが、その表情は可愛らしい名前にとても似合っている。
ただ言っている内容が段々と、どこかの伊達眼鏡鬼畜元優等生臭くなくなるのは何故なのだろうか(嫌に具体的なのはスルーで)。
いや、弟は正真正銘の現優等生ではあるのだが。
姉上は少し心配になるよ。



「お帰り!」

クィリナス達と別れ、実家に帰ると何時もの如く両親は嬉しそうに玄関口で迎え入れてくれた。
けれど彼らの笑顔が私に向けられることは無いし、私も今更そんなものを向けない。
ただ、しもべ妖精のラナが目を潤ませながら名前を呼んでくれるだけ。
話がすぐに(彼らの自慢の)弟の成績の事になることは分かりきっているので、私は彼女を連れてさっさと自室へと向かった。
後でまた何か言われるだろうが、とりあえずセブルスが貸してくれた本や、課題達、グリフィンドール関係のものは両親の目の届かない所に仕舞っておかなくてはならない。
彼らの(特にヒステリックな母の)気に触れば、いつ壊されたっておかしくはないのだから。
ラナに手伝わせながら仕舞い終え、(我が家ではいくら魔法を使っても問題ないらしい。詳しくは不明だが)扉があかないように魔法をかけ終えると、思わずベットに座り込んでしまった。

様!」

相変わらずの男のような低い声で、ラナがお茶にしましょうとティーセットを用意してくれた。
久々に飲む彼女の紅茶はとてもおいしい。

「大丈夫ですか、様。ラナがフェルリナ様をお呼びしましょうか」
「大丈夫よラナ。だけどフェルリナがどうしてるかは何時も通りこっそり知らせてね」
「はい!ラナは様の言いつけを守ります」

背筋を伸ばして嬉しそうにラナは返事をする。
ちくりと、胸が痛んだ。
誰よりもラナの紅茶はおいしい。そしてその味は両親ではなく私達の好みだ。
だから私達はラナを近くに置く事が出来ている。そしてラナも、少しだけ身なりを綺麗にしていられて、この屋敷中のしもべ妖精から尊敬される。ラナが何の特技もない、ただの屋敷しもべ妖精だったら…きっと両親は彼女を認識することもなく虐げ続けたのかもしれない。
わかっている。あの子はともかく私がラナを贔屓するのは、自分に似ているかだらと。
あの時のラナの勇気ある行動にではなく、ただ自己満足なのだと。

「ありがとうラナ」


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