休暇へ
ドリーム小説 試験と忘れかけていたOWLが終わって、生徒達は夏休みを迎える中、私も傷の治りきってない足に苛々させられながら実家へ帰るために急行列車へと乗り込んだ。
怪我をしてからというものの、私の周りは騒がしくなった。
もの凄く世話焼きになったリリー、リリーがどうのこうのと言いながら私の傍をうろちょろするジェームズ、それが気に食わないらしい(単に暇なのかもしれないが)ブラック。
心配されているのはよくわかったし、たしかに安全ではあったので逃げ出す事はしなかったのだが、少し気になることがった。
私の大っ嫌いなブラック。
それなのに私はどうやらあのブラック以外の理由で苛々しているみたいなのだ。
一応、このごろクィリナスやセブルスといった他寮の友人に会えないせいだと思っているが、ジェームズはそうとは思っていないらしい。
ニヤニヤしているのを見る限り、ルーピン関係だと思われているようだ。
私はそれほど1人の人間に時間を割かないのだが・・・否定しても理解されそうに無い気がするので、わざわざ否定もしなかった。
そんなこんなで、コンパートメントは私、リリー、ジェームズ、ルーピン、ブラック、ペテグリュー(?)という小柄な男の子で一杯になってしまっている。

「だけど僕は思うんだよシリウス・・・」
「それはないだろ。俺がが思うに、あいつは・・・」
「うーん、いやそれよりも、こんなのはどう?」
「ちょっと、あなたたち静かにしてよ!」
「・・・うーん」

正直、煩いしきつい。
だがこれぐらいは我慢するべきだろうか。窓にもたれかかりながら、思う。
けれど、これを逃すと夏休み中はおそらく会えないだろうし、出来ればそろそろ脱出したいのだが、クィリナスがどこにいるか私は知らないのだ。
…たまにはグリフィンドールらしく、猪突猛進なことをしてみようか。



意外や意外、思ったよりも楽に逃走をする事が出来た。やはり彼らもテスト明けで気が緩んでいたのだろう。グリフィンドールの英雄ジェームズを倒した(?)ことに思ったよりも嬉しくなりながら車内を歩いていると、程なくしてクィリナス達のいるコンパートメントを見つけた。
問題は中に見知らぬ少年がいたことだ。
・・・ガラス越しに見た少年はどうにも数年前のブラックに似ていた気がする。まあ純血の名門ブラック家までなるとマルフォイ家まで血が繋がっていると聞いているし、あいつに似た顔の人間が生まれてもおかしくはないのだが。入ってもいいものかと迷う。
ちなみにこれは友人同士の気使いとかではなく、家の長女としてどうすれば良いのか判断に迷うのだ。弟への影響も多少は考えて行動しなければいけないだろう。
せめて、もう少し顔をはっきり見れれば誰なのかわかったかもしれないが。
そんなことをとっさにターンしてたどり着いた車両の端でぼんやりと考えていたら、突然名前を呼ばれた。

「…ミス・っ!」
「こんにちは」

先ほどの少年だった。
真っ向から対峙したことでわかる、兄と同じ闇色の髪を持つブラックの次男だった。道理で似ているはずだ。
名はレギュラス・ブラック。兄の一年後にホグワーツのスリザリン寮にめでたく入り、一つ下なので今は四年生。
そんな彼が、グリフィンドールなどに入った私に、わざわざ嫌味を言いに来たらしい。
それはまあブラックらしい行動である。
グリフィンドールに入った途端に私は放棄してしまったが、ご苦労様なことです。
けれど、この焦りようはブラック家の上品さとはかけ離れているように見えるのだが、それはかまわないのだろうか。
思わず疑問に思って、そんなことはどうでもいいかと思った。
私には関係ないことだ。

「あの……実はフェルから…」
「……?」

言いにくそうに言葉をつまらせた彼に、首を傾げる。
グリフィンドールへの嫌味など、それこそ寝言でも言えるほどに言い慣れているはずだ。
それにフェルというのは私の弟のフェルリナのことだろうか。

「レギュラス!」

そこに、聞きなれた声がした。クィリナスと…久々に見る弟だ。

「フェルリナ…」

また少し、背が伸びた気がする。

「大声を出してすみません、姉上。お久しぶりです」



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